インタビュー

2025.01.14

大学院は自分のオリジナルな考えを伸ばすことのできる場

文学部 専任講師(文学研究科 英文学専攻)  横山 晃

研究分野:アメリカ文学・文化

大学院に進学したきっかけ、研究者を目指したきっかけを教えてください。

 「これがやりたい」という明確な将来のヴィジョンが自分にはなかったので、大学院で勉強に真剣に取り組んで、それが自分の進むべき道になるか見定めようという気持ちがありました。大学院に入ったときは就職のことまで考えていなかったのですが、修士課程に三年間在籍するなかで、博士課程に進むことを決断しました。漠然とした不安はありましたが研究中心の生活がそこまで苦ではなく、やりがいを感じることができたのが大きな理由だと思います。指導教員と院生仲間、そして理解してくれた家族に感謝しています。

ご自身の研究テーマや研究活動について教えてください。

 専門はアメリカ文学及びアメリカ文化です。文学だけでなく、映画も含めた芸術表現を研究の対象にしています。文学や映画作品は何をどのように表現しているのか、それぞれの表現形式の違いとは何か、そもそもなぜフィクションは創作され受容されるのか、そしてフィクションの受け手は創られた世界をどのように想像し理解するのか、というのが大きなテーマです。

 元々はアメリカ人作家、アーネスト・ヘミングウェイの文体に着目して、文字作品が時間・空間的経験をどのように表現しているのか、ということを研究のテーマにしていましたが、そこから文体が内容の伝達にどう関わっているのか、ということに興味範囲が広がっていきました。そもそも作家ではない私も自分の経験や感情を他人に伝えようとしますが、自分の経験を他人に伝えることはどの程度可能なのか、あるいは自分は他人の伝えようとしていることをどの程度正確に理解できているのか、という疑問が研究テーマの根幹にあります。その意味では、専門は人文学と言った方が研究の興味範囲と照らしても正確かもしれません。

 アメリカ文学を研究していると、時代や地域の異なる人々について考えますが、こうした「他者」について想像することが人文学の本質にあるような気がします。とくに戦争や災害が起きたとき、その痛みや喪失を伴う経験はどの程度伝達可能なのか、自分と他者との間にある差異を超えた理解はどうしたら可能になるのかと考えます。こうした他者理解について、今後はテクノロジーの発達によって感覚や感情の共有が可能になると思います。それでも、人文学的なアプローチの有効性は残り続けると思っています。

 現在はテキサス州の歴史、特にアラモの戦い(1836)がどう語られてきたのか、というテーマを中心に研究を行っています。大学院生のときにテキサスに留学していたのですが、アラモの戦いはテキサスの独立につながったこともあり、戦いの舞台となったアラモの伝道所だけでなくサン・アントニオの町自体が観光地として賑わっていました。面白いことに、アラモの戦いで活躍したデイヴィー・クロケットに関しては、アメリカの伝統である「ほら話」のスタイルで語られることが多く、実在した人物であるにも関わらずクロケットは真偽不明の、誇張された逸話をいくつも持った伝説のような人物として語り継がれています。フィクションとファクトの境界にまたがり、それゆえにテキサスに愛されるクロケットの逸話の構造やパターンを知ることで、魅力的なテキサスという土地をより深く理解できるのではないかと考えています。

大学院を目指す人へのメッセージをお願いします。

 大学院は自分のオリジナルな考えを伸ばすことのできる場です。ただし自分だけの考えでは行き詰まることもあります。そんな時どうすればよいか、解決につながりそうな方法があります。一つはロール・モデルを見つけておくこと。道に迷いそうになったら、成功した人が立てた道標を確認する。もう一つは、切羽詰まっても「なんとかなる」と考えてみることです。自分を落ち着かせて、「なんとかなる」と考えたら次にはゴールから逆算して今取るべき行動を冷静に把握できるはずです。

※掲載内容はインタビュー当時のものです。

Interviewインタビュー

教員

大学院は自分のオリジナルな考えを伸ばすことのできる場

文学部 専任講師(文学研究科 英文学専攻)横山 晃

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