インタビュー
2023.03.23
他分野の研究者や地域の実践者と協働した研究プロジェクトを展開
理工学部 教授(理工学研究科 建築・都市学専攻) 山本 俊哉
研究分野:都市計画/まちづくり/都市・建築安全/都市防災
ご自身の研究分野や研究テーマ、研究室での研究内容について教えてください。
私の研究分野は、建築・都市計画、まちづくりです。専門領域を横断する研究分野であるため、多角的な視点や他の専門分野との連携が必要とされます。また、研究対象が地域における実践を伴うため、地域の様々なステークホルダーと関わる分野でもあります。
私自身の研究テーマは、大きく分けて2つあります。一つは、「都市計画に伴う地域変容の解明」です。例えば、震災復興の都市計画事業の検証や防災都市計画による密集市街地の改善、近代都市計画に伴う大名屋敷の変容などの解明です。
もう一つは、「安全なまちづくりの支援ツールの開発」です。例えば、津波をはじめ様々な災害からの避難を支援する「逃げ地図」づくり、まちづくりを通して子どもの安全を確保する電子マニュアル、データに基づき住宅侵入等の危険性を可視化するソフトなどの開発です。
私の研究室では、外部競争資金を確保して、上記の研究テーマについて他の専門分野の研究者や対象地域の実践者らと協働した研究プロジェクトを展開していますが、所属する大学院生の一人ひとりの研究は自ら主体的に研究計画を立案し、その研究の学術的な問いに関する対話や議論を重ねてそれぞれ研究を進めています。
大学院学内GP※での取り組みについて教えてください。
他大学大学院との研究交流プログラム(大学院学内GP)には、10年以上前から取り組んできました。北は北海道大学から南は九州大学まで、いずれも国立大学の大学院との研究交流プログラムです。最近は、文学研究科の臨床人間学専攻の平山満紀教授とその大学院生と一緒に、2020年度は奈良女子大学、2021年度は九州大学、2022年度は弘前大学に赴き、それぞれの大学院との研究交流を実施しました。
私の研究室(山本研)と平山満紀先生のゼミ(平山ゼミ)は、キャンパスが生田と駿河台に離れていますが、ともに明治大学の東日本大震災復興支援に携わりつつ、学内外で協働や交流をおこなってきました。たとえば、岩手県大船渡市や陸前高田市の市花となっているツバキ(椿)を活かしたまちづくりや、2017年11月の第1回明治大学アカデミックフェスの異ノベーションフォーラム「地方創生の現在」において両者が報告したことなども、研究交流のひとつです。
2020年度からはコロナ禍に見舞われ、大学院学内GPも思うように実施できない状況が続きましたが、参加人数を絞り、交流の機会と時間も必要最低限にとどめ、計画通り実施しました。2020年度と2021年度の参加者は山本研から4名、平山ゼミから2名を選抜しましたが、2022年度はそれぞれ1名ずつを増やし、交流先大学院の院生たちと研究成果を発表し合いました。双方の大学の指導教員だけでなく、大学院生も活発に質問をして、強い刺激と深い学びが得られるとても有意義な研究交流会となりました。
交流先大学院の専攻は、奈良女子大学は人間文化総合科学研究科・住環境学専攻、九州大学は人間環境学府・都市共生デザイン専攻、弘前大学は地域共創科学研究科・地域リノベーション専攻であり、いずれも地域社会と向き合い、地域の活性化や政策研究に実践的に関わるまちづくりという共通のテーマに取り組む隣接分野でした。いずれの研究交流プログラムも、大学院生同士の研究発表会を中核に据えて、大学のキャンパス内やその周辺地域のまちづくりを見聞するガイドツアーを組み込みました。ガイドは、相手の大学の担当教員や大学院生らが担い、それらの研究成果を交えた解説により、現地に行かなくては得られない学びがありました。
参加した大学院生からは、「学問の懐の大きさを実感し、より広い視野を持って学んでいきたいと強く刺激を受けた」、「留学生が多かったこともあり、環境の異なる同世代がどのようなことに興味があるのかを少しでも知ることができたことがとても嬉しかった」、「どのような研究テーマであれ、進め方や伝え方など研究の根幹的な部分は共通していることを実感し、自分の研究発表を客観的に見直す大変良い機会にもなった」などの率直な感想が寄せられ、大学院生の一人ひとりにとって意義深く、各自の研究の発展に寄与する研究交流プログラムとなりました。
※明治大学大学院では「大学院学内GP」として、他大学大学院生との研究交流プログラムを支援し、大学院生の研究活動をより一層活性化することを目指しています。
大学院を目指す人へのメッセージをお願いします。
大学院では、自ら設定した研究課題を深めることができますが、同時に、幅広い視野からじっくりと考えることができます。明治大学は伝統ある総合大学の強みを活かし、文理融合・領域横断の研究・教育を積極的に進めています。あなたの様々な可能性を追求し、地球規模で広がる社会的課題の解決に、一緒に挑みませんか?
※掲載内容はインタビュー当時のものです。